うらきょっ! ばぁじょんアオ そのにっ |
| マリアの実家は金持ちだった。
そのマリアが、あたしを心底信頼している。 結果、ご両親もあたしのことを信頼してくれているようで── それが、あたしが今、ここにいる理由だった。 「お姉さま、楽しんでらっしゃいますかぁ?」 全幅こそ三十メートル前後しかないものの、全長は三百メートル近く。乗客定員は約二千人まで収納でき、その他に乗組員が千人強乗り込めるのだとか。 一億ドル二億ドルといった額を楽に越える資金が注ぎ込まれて作られた、そんな豪華客船マリア号のデッキにて、ボーッと海を見ていたところをマリアに話しかけられたのだった。 マリアと再会してからしばらく経った、マリアの誕生日があった週の週末。マリアの親御さんが、娘の誕生パーティを娘と同名の客船で行おうということになり、そしてその際にマリアがあたしを呼びたいと言う事で、こういうことになったのだった。 「……ああ、楽しんでるよ」 そう答えたが、嘘だった。 初めての豪華船の中、何をして良いかまるで分からない。 いや、できることは沢山あるのだ。広い海を眺めながらのスカイラウンジやら、最上階にあるプールやら、ルーレットやカードによるカジノやら、ダンスホールやら…… しかし住む世界が違うとでも言おうか。ぶっちゃけ、居心地悪いことこの上ない。 しかし、せっかく招待してくれたマリアの好意を、ハッキリとそう言ってしまって踏みにじるのも躊躇われて。 仕方ないので、あたしはここで海を眺めていたのだ。 「……お姉さま、疲れてますかぁ?」 「ん? ああ……いや、でもちょっと眠くなっちまったかな」 「それは行けませぇん、せっかくのパーティで眠くなったら、勿体無いですぅ」 「やっぱそうかな」 「はいぃ、部屋に戻って、少し休んではどうですかぁ?」 「……そだな。キャビンに戻るか」 「はぁい♪ じゃあマリア、お部屋までお付き合いして、お姉さまがお休みになるまで話し相手になるですぅ」 「……それは遠慮しとく」 「な、なんでですかぁ?」 「お前、そのままあたしが寝たのを見計らってベッドに入ってくるつもりだろ」 「そ、そ、そ、そ、そ、そんなこと、ないですよぉ?」 せっかくの否定も、目を逸らしながらの声がどもりながらじゃ説得力が欠片もないと思うんだがどうか。 「この際ハッキリいってとくけど、お前と一線越える気はないからな」 「そんなハッキリ、おっしゃらなくてもぉ……」 ……そんなあからさまに落胆しなくても良かろうに。 「えっと、じゃあじゃあ、せめてマリア、時間になったら起こしに行くですぅ!」 「ああ、それはよろしく頼む」 という訳で、あたしはマリアの案内によって割り当てられた自分のキャビンにやってきた。 「サンキュー、マリア。じゃあ時間になったら起こしにきてくれ」 「……やっぱり、お部屋にお邪魔しちゃダメですかぁ」 「ダメ」 キッパリハッキリと答える。ぶっちゃけ、女に興味はない。──だからといって、男はもっとゴメンだったが。 あたしがマリアの入室を拒否し、そのままキャピンに引っ込もうとした時、マリアはぽつりとあたしに問いかけてきた。 「お姉さま……どうして、私と付き合ってくださってるんですかぁ?」 「は?」 どうして、とはまた、答えにくいことを聞く。しばしあたしが返事に困っていると、マリアは今まで見たこともない、寂しさとも悲しさとも付かない表情であたしを見つめてきた。 「友達、ですか?」 「……そりゃ、そうだろ」 「私の気持ちは、ご存知なのに?」 ………………! 「なんの、ことだ」 あたしは、マリアの言葉が分からないようなふりをしてそう聞き返した。 「一線越える気はないっておっしゃったからぁ、逆に言えば、私の気持ちは分かってくれてるんですよね?」 ダメだ。 「私が何を望んでるか……お姉さまは分かってるのに。その上で一緒にいるのに、させてくれない」 マリアは本気だ。 「私、お姉さまの何ですか」 いつもみたいに、笑って、甘やかして、ちょっぴり意地悪して、拗ねさせて──そんな風には、済ませてくれそうにない。 「単なる、時間つぶしの相手なんですか」 あたしを、見逃してくれない。 「私はお姉さまと、つながれるかも知れないって思うから、ずっとずっと待ってるのに」 ゴメン、マリア。 「時間を潰すためだけに、私の気持ちだけを利用して、つき合わせてるんですか」 オネガイ、ユルシテ── 「そんなの……残酷です」 あたしはその言葉に、胸をえぐられた。 その後、正直あまり記憶がない。 言いたいことだけ言うと、マリアは部屋の前から立ち去っていたみたいだった。 茫然自失から気が付いたあたしは、キャビンに入るとベッドの中で一人、悶々ともだえていた。 マリアが求めているものは、あたしとの関係。 男が怖いから、女で男っぽいあたしとの、友としてのラインを越えた心身のつながり。 あたしはそれを知った上で、そんなマリアに懐かせてはいるが一線を越えさせはしない。 何故? そうだ、あたしは── ──マリアノトラウマヲリヨウシテ、ジブンノコドクヲイヤシテイルダケ── 何が違う。 薫子の時と、何が違う? 自分は強いからと、一人で我を張って。 弱い奴は、仕方ないから懐かせてやるとか嘯いて。 結局。そいつがいなきゃダメなのは自分の方なんだって思い知らされる。 誰か、あたしを構って。 あたしを一人にしないで。 あたしを見捨てないで。 誰か── 違う。違う。違う! あたしは、如月美沙樹は、何でも一人でやってきた。あたしには連れも相方も必要ない。 何故なら、あたしは強いから。 つるむなんて、弱い証拠だ。強いあたしにはつるむ必要はない。 孤独が「寂しい」と。「悲しい」と思うのは、弱い証拠だ。 だから。 だから、そんなものはあたしの中にはない。 ない、はずなのに。 この、薫子に縋りたくなる気持ちはなんだろう? 薫子を求めてしまう、この気持ちはなんだろう。 認めちゃダメだ。 認めてしまったら、あたしはあたしじゃなくなる。 だって、それじゃあ。 オネガイ。ナニシテモイイカラ。ナンデモシテアゲルカラ、アタシヲヒトリニシナイデ── 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 あたしは絶叫した。 絶叫しながら、キャビンの壁に頭をたたき付けた。 一発、二発、三発、四発、五発。 額から血が噴出し、壁に飛びつく。 いらない。 薫子がいなくちゃ、いられないようなあたしなら。 そんなあたしなら、いらない。 六発、七発、八発、九発、十発。 額の傷はどんどん広がり、壁が加速的に赤く染まっていく。 だって、こんなあたしならいらない。 こんなあたしなら、必要ない。 薫子が必要なあたしなら。 それを認められないあたしなら。 薫子の代用品とばかりに、マリアの心を弄ぶようなあたしなら。 そんな如月美沙樹なら、必要ない。 必要ない。 必要ない。 必要ない! 十一発。十二発。十三発。十四発。十五発── もう。何度叩きつけたかも分からない。 もしかしたら頭骨が割れ、脳漿が飛び散っていたかも知れない。 でも構わない。 死ぬのなら、死ねば良い。 消えるのなら、消えてしまえば良い。 弱いあたしなんか、消えてしまえば良い。 消えろ。 消えろ。 消えちまえ──! 「いい加減になさったらいかがです?」 半欠けであるあたしは死なない。 死なないのを良いことに、永遠とも思える永い時間、無限とも思える回数、壁に頭を叩きつけていたあたしの耳に、玲瓏な、しかし感情の希薄な声が響いた。 「貴女がお馬鹿さんなのは前から分かってましたけど。良いから落ち着いて下さい。そんなに強く壁を叩いていたら耳障りです」 あたしは、声のした方にゆっくりと振り向く。滴る血が入って霞む目と、潰れている脳では相手が誰か歴然としなかった。 「はっきり言わなければ分かりませんか? 私です」 そこには無表情な、日本人形の顔が在った。 「……よう、ヒナ。元気だったか?」 「先日、お逢いしたばかりなのですが」 「あーそっか。また返り討ちにしたんだっけな、あたし」 「………」 と、何がそんなに気に入らなかったのか、無言で腹を踏み付けられる。あー、マジで痛てー。 「思い上がらないで下さい。私が本気になれば貴女など瞬殺です。けれどそうしないのは、少なからず貴女の境遇に同情しているからなのですよ、如月美沙樹さん」 「あ、そ」 彼女はそう言って、敵であるはずのあたしに手を差し伸べてくれた。てっきり起こしてくれるものと思い、その手を取るあたし。 次の瞬間、あたしの身体は宙を飛んでいた。 「理解しましたか? 私は狩人、貴女は獲物。必死で逃げる獲物を追い詰め、嗜虐の悦びに浸ることこそ狩人の本懐。それなのに貴女がそんな腑抜けな状態では、仕留め甲斐が無いというものです」 「あ、ども」 したたかに背中を打ち、痛みのあまり悲鳴を上げそうになるも何とか堪えて。 「だったらもう二度と、あたしの前に現れねえでくんねえか?」 キャビンの床に唾を吐き、あたしは身を起こした。何がそんなに不満なのか、不機嫌そうに顔をしかめている少女と目が合った。 そう言えば。今日の彼女は、いつものセーラー服ではなかった。雪のように白いワンピースが、シックな雰囲気のキャビンに良く映えている。 「全くもって嘆かわしい。いつもの貴女なら、この数瞬で三度私を倒せていたはずです。何があったのかは知りませんが、今の貴女に私のライバルたる資格はありません」 「いや、だから。あたしがいつ、アンタのライバルになったよ? もういいだろ? 殺す価値も無いんだったら、もうあたしを構うなよ……それでも殺さなきゃいけないんだったら、さっさと殺せよ。どうせあたし、もう半分死んでんだろ? だったら、いいよ。どうせこれ以上生きていたって──」 「何を馬鹿なことを言っているんです? 自分の命を軽んじてはいけません」 「……は?」 この女は一体、何を言っているんだろう。思わず耳を疑ってしまう。 「良いですか? たとえそれがどんなに小さな命であったとしても、生命を粗末にしてはいけません。それは神様から授かった、この世にたった一つしか無い、大切な宝物なのですから」 諭すように少女は言って来る。あたしに生きろと、彼女は言う。あたしを殺そうとしているのは、他ならぬ彼女なのに。 何だか、馬鹿にされている気がした。 「ハッ、その口でよく言えたな。狩人のテメエが、獲物であるあたしに情けをかけるってか? 馬鹿にしてんじゃねぇよ。命を軽く扱ってるのは、テメエの方じゃねえか」 「そんな……そんなことはありません。半欠けにだって、半欠けとなった理由が──」 そこまで言って、ヒナは言葉を飲み込むように言葉を切った。そして、新たに言い直す。 「……私はただ、貴女とベストコンディションで決着を着けたいだけです。他の誰かに、狩られてしまう前に」 「へー、そう」 「え……きゃっ」 普段なら聞き流せそうな彼女の戯言一つ一つが、何だか無性に気に入らなかった。 何を言っているのだろう、この女は。あたしと最高の状態で戦いたい? 首筋に手を触れると、彼女はびくっと肩を竦めた。何を今更、可愛い娘ぶっているんだろうと思った。 「あたし、今相当溜まってんだよ。欲求不満って奴? だからさ、アンタで満足させてもらうわ」 「え、でも、そんな」 「あたしに元気になって欲しいんだろ? だったらあたしの気の済むようにさせてもらうぜ。あたしを満足させて、それからあたしを殺すが良いさ」 「……美沙樹さん」 少女の瞳に、困惑の色が浮かぶ。まあ当然の反応だ。彼女にとって、あたしは獲物に過ぎないのだから。獲物の欲望を満たすために己が身を差し出す狩人がどこに居る? さあ、何を馬鹿なことをと、いつものように一笑するがいい。そしてあたしを殺すなり何なり、好きなようにすればいい。こちとら、死ぬ覚悟はとっくの昔にできているんだ。 「わかりました」 だが。予想に反して、彼女の口からは意外な言葉が飛び出していた。 「貴女がそれをお望みならば。私は、貴女に従います」 昼下がりと夕刻の狭間のキャビンは静寂に包まれていた。空調の効いた室内で、あたしと彼女──そう言えばあたし、この女の名前知らないんだった──は静かに見つめ合っていた。彼女が何を考えているのか、あたしには全く読めない。彼女もまた同様なのだろうか? だから先程から何も言わず、こちらの様子をじっと観察しているのだろうか。 「おい、テメエ。何を企んでいるのか知らねえけど、そこまて言ったらもう、取り消しはできねえぞ? いいか? あたしは今から、テメエを気が済むまで打ん殴る。それが嫌なら、今すぐあたしを殺してしまうこった」 彼女は、あたしが思っていた以上に幼く、手足は今にも折れてしまいそうな程に細かった。恐怖からだろうか、彼女の肌は僅かに震えていて。それがあたしの、嗜虐心をくすぐった。力の限り乱暴に突き飛ばし、彼女をベッドに大の字に寝かせる。すかさず、馬乗りになった。 「怖い? ヘッ、良いねその顔。直ぐにその顔を苦痛に歪めてやるよ。痛くて辛くて怖くて、泣いても許してやらねえ。アンタがあたしのことを獲物としか見ていないように、あたしもアンタのことを八つ当たりの対象としてしか見てねえんだから。……この意味が分かるか? どんなに偉そうに言ったところで。所詮テメエには、あたしを本当に満たすことはできねえってった」 そう言って、あたしは思いっきり女の顔を殴りつけた。返す拳でもう一回殴っても、彼女が拒むことは無かった。怒りのままに、彼女の顔を蹂躙する。 「顔は鍛えられないってか? 全然硬くねえな」 「……美沙樹さんは」 「何だ? そろそろ嫌になったか? そりゃそうだ、顔を脹らされてんだから。さぞかし憎いことだろう。殺したいと、思う程に」 「美沙樹さんは、どうしてそんな、悲しい眼をしているんですか……?」 「──っ──!?」 全く予想だにしていなかった、彼女の言葉に。全てを見透かされたような気がして、あたしは思わず視線を逸らしていた。 「美沙樹さん。確かに私には、本当の意味で貴女を救うことはできないでしょう。それは単純に、貴女を元の人間に戻すことができない、というだけではなく。貴女の肉体と精神、両方を満たすことは、私にはできません。けれど、それでも貴女は、私にすがり付いて来ました。助けて欲しいと、私を頼ってくれました。だから私は、せめて貴女の苦痛を、和らげてあげたかった」 「ちょ、ちょっと待てよ。あたし、テメエに頼ってなんか」 「はい。それは私の思い過ごしなのかも知れません。でも、あの時。貴女が私に言った言葉は、真実だと思うから」 寂しい、と。 だけど、怖い、と。 あの時──彼女の胸に顔を埋めて泣いたあの時、あたしは確かに、そんな言葉を口にしていた。 「ば、か」 だけど、だから、何だというのだ。そんなことのために、この娘はあたしを、助けたいと思ったのか? 他人の、しかも殺害対象であるはずの、このあたしを。 「は、は、は。ばか、じゃないの、あんた」 「良く言われます。でも、仕方が無いじゃないですか。 目の前で恥も外聞も無く、あんな風に泣かれてしまったら。幾ら私でも、同情くらいはしてしまいます」 「は、は。でも、殺すん、でしょ?」 「勿論です。約束ですから、貴女が私を気の済むまで殴った後で、楽にして差し上げます。できるだけ苦しまないよう、一撃で」 「あ、あは、あははははっ……!」 馬鹿だ、こいつなんて大馬鹿者なんだ。考えれば考える程、可笑しくて可笑しくて。あたしは、笑わずには居られなかった。馬鹿だ、ホント。 だけど。 本当に馬鹿なのは、あたしの方なんだ── 「あー、やーめだやめだ、もうっ」 ひとしきり笑った後で。何もかもがアホらしくなって来て、あたしはベッドから起き上がった。 「アンタ、もう帰りな。これ以上あたしに付き合ったら、馬鹿が悪化するぜ?」 「あら。私を気が済むまで殴るんじゃないんですか?」 「気が済んだら、あたしを殺すんだろ? そんなのゴメン被るぜ。あたしはまだ、やらなきゃいけないことがいっぱいあるんだ」 そうだ、あたしにはまだやることがある。だからまだ、死ぬ訳にはいかないんだ。 「だから、アンタとの決着はまた今度」 薫子に謝る。彼女を傷付けてしまったのはあたし、だから嫌われても仕方は無い。それは、覚悟しなければならないことだ。彼女が傷ついた分だけ、あたしも傷つかなければならない。そうでなければ公平じゃない。 けど。それで少しでも薫子の気持ちが収まるのなら、それで良いんじゃないかと思った。 「そうですか。私としては、ここで終わらせたかったのですが。残念ですが、決着は当分先になりそうですね」 キャビンの戸を閉める瞬間。能面のような無表情の少女の顔に、僅かではあったが微笑が浮かんだような気がした。 何だ。案外、可愛い所あるじゃん。 そんなヒナを見たためか。あたしは、言ってはならない類の言葉を口にしてしまった。 「しかし案外胸ないのな、お前。馬乗りになって気づいたけど」 どうもその一言は、和やかに終わろうとしていた話に爆弾を投げ込んじまったみたいで。 気づくとあたしは、ヒナにベッドのフトンで簀巻き状にされ豪華客船から放り投げられていた。 やだねー、軽い冗談を解せない輩は。 で。 満天の星空の下、聞こえて来るのは波の音ばかり。 このまま消えちゃうのかな。 いや、あたしは半欠けだから、消えないかも知れない。 でも、確実に毎回、絶対消えないなんて保障はどこにもない。 このまま、死んだままになっちまうかも知れない。 あたしが、なくなっちまうかも知れない。 もし、このまま消えてしまうなら。 もし、海があたしを飲み込みきってしまうなら。 あたしには、まだ最後にひとつ、しておかなきゃいけないことがある。 都会とは思えない、異様な静けさの中であたしは。 携帯のボタンに、指を伸ばした。 「よ、薫子。うんあたし。久し振り、元気してたか? そう、そりゃ良かった。ああ、あたしもばりばり元気だよ。それで、早速で悪いんだけどな。ちょっと警察か何か呼んでくれないか? このままだとあたし、海の藻屑になっちゃいそうで……え、絶交? なんだ薫子、本気にしてたのか? 冗談に決まってるじゃーん。へっへー、騙されてやんのー。……ごめん、ちょっと悪ふざけが過ぎた。今物凄く反省してるトコ。今更だけど痛感してる。ホント、ごめん。でな? ここからは冗談でも何でもないからちゃんと聞いてくれ。あのな、今あたし東京湾に居て──あー違う、海岸じゃなくて海のど真ん中。それで、このままだと鮫の餌になっちまうから……え、何? 今度は騙されない? 何言ってんだ今度は本当なんだ信じてくれよなあ頼む──」 プツ。不意に交信が途絶えた。海水に濡れて携帯が故障したか、はたまた受信圏外になったのか。原因は良く分からないが、とにかくあたしは絶体絶命のようだった── ……幸いにも数日後、あたしはたまたま通りかかった漁船に救助された。 いの一番に駆け付けた薫子の、取り乱しぶりは凄まじかった。わんわん泣き付いて来るかと思えば、突然首を括って自殺するとか言い出したり、お見舞いのメロンを切ろうとしてそのままリストカットしそうになったり。その様子があまりに痛々しくて、ツッコむことさえできず。あたしはただ、彼女の狂行を生温かい目で見守ることしかできなかった。 もう二度と薫子に、嘘と冗談は吐かないようにしようと思った。後、ヒナにも。 てことで、明日に続く……と良いなぁ(溜め息) あとがき 以上、私版「うらきょ!」第2弾でした。全編に渡って少し練りが甘い、いわば未完成品なんですが、今お届けしておかないと次いつになるか分からないので送信しておきます。それに、今まで何度も「書いてる書いてる」と言ってはいても全然お見せしてこなかったので、「言ってるだけで一文字も書いてへんやろ実は」とか思われるのも寂しいし、一応こういった物は書いていました、という証拠としてもお届けしておきます。
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