うらきょっ! 第二十二話「陛下たん萌えぇぇえッッ!!!」 |
| 「ボク」は穴掘りをしている。 落とし穴くらいなら掘ったことあるけど、こんなに深いのを掘るのは初めてだ。 ざくざく、ざくざく。スコップじゃなかなか進まない。 ざくざく、ざくざく。でも、これは「ボク」がやらなくちゃいけないこと。 だって掘るのは、「ボク」のお父さんとお母さんのお墓なんだから。 ざくざく、ざくざく。二人分のお墓。 ざくざく、お父さん。ざくざく、お母さん。 二人とも、今までおつかれさまです。 それから、おやすみなさい。 「ふぁーあ……あ」 思わずあくびをしてしまって、「ボク」はあわてて口を閉じる。こんなシッタイ、誰かに見られたら笑われちゃう。そんなのぜったいダメ。コクミンのモハンとなるのが「ボク」のお仕事なんだから。 よかった。お部屋には誰もいないみたい。絵本に出てくる、お城みたいに大きなお部屋に「ボク」一人。はじめはさびしかったけど、もうだいじょうぶだよ。大好きなお父さんとお母さんが、ずっとそばに居てくれてるってわかったから。 シーツにお顔を埋めると、お母さんの匂いがした。あったかいのはお父さん。みんなは二人がどこか遠くに行っちゃったって言うけど、そんなことは無いよね? だってお父さんもお母さんも、離れ離れにならないように一緒に埋めてあげたんだもん。 「シンノウ陛下! もー、いつまでおねむなんですか!? ご覧なさい、お天道様はとっくにオハヨウSUNですよっ!」 お布団の中でしばらくじっとしていると、なんだかこわい顔をした茜(あかね)さんが入ってきた。「ボク」より五つ年上のお姉さんで、お父さんとお母さんの次に好きな人だ。 「ふぁ? あ、おはようさんです、あかねSUN」 「あ、あたしはSUNさんじゃないです! 寝惚けないでくださいっ」 「ですよねー」 朝からどたばたしてる茜さんを見るのが、「ボク」にとってのニッカのひとつ。 こうして「ボク」の一日が始まる。 神様の王様で「神皇」。シンノウって読むんだって。 みんながみんな、「ボク」のことをそう呼ぶんだ。今いちピンと来ないけど、何かかっこいいかも知れない「ボク」の名前。 でも、お父さんとお母さんはそんな風には呼んでくれなかった気がする。今はもう、覚えてはいないけど。きっと「ボク」には、別の名前があったんだ。 神皇である「ボク」には、大切なお仕事がある。それはコッカのショウチョウであること。難しくてなんだかよくわからないけど、前はお父さんがやってたことだって聞いたからがんばらなくちゃ。コウムをテキセツかつジンソクにこなして、早く一人前の神皇になるんだ。 でも、たまに思うんだけど。 「ボク」って神皇に向いてないんじゃないのかなぁ……? 「早く早く! ちんたらやってたら公務に遅れちゃいますよ! 遅れたらどうなると思います? 赤っ恥ですよ赤っ恥! マスコミにぶったたかれてお先真っ暗ですよあーもー!」 「そ、そんなこと言ったって。帯が絡まっちゃって」 「うあぉうっ!? お着物はだけさせてどーすんですか陛下! 朝っぱらから猥褻画像てんこもりですか!? 大きいお兄さん達がおっきしそうで困りますね! 不健全極まりないっ」 「ええと。何言ってるのかよくわからないんだけど……」 「実を言うとあたしも詳しくは知らないんですけど。そんなことより公務公務! 人生は長いようで短いんですから、一分一秒を無駄にしないでくださいっ」 茜さんに手伝ってもらって、やっとお着物に袖を通すことができた。そういえば、昔はお母さんにやってもらってたっけ。あの頃はお洋服も一人では着れなかったけど。今は茜さんが居てくれるから大丈夫。って、本当は自分でしなきゃいけないことなんだけどね。 「じゃあ、いってきまーす」 「いってらっしゃ──てぇっ!? 忘れ物です、シンノウ陛下!」 「わぁあっ!?」 「あああああっ!? すみませーん! お怪我は無いですか!?」 急にお袖を引っ張られて、しりもちをついちゃった。そんなに痛くはなかったけど、茜さんは大慌てで「ボク」を助け起こしてくれた。ごめんね、いつも迷惑ばかりかけて。 「平気だよ。それより忘れ物って何? お弁当なら持ったよ」 「違います! これですよこれ。……ほら、今日は皆さんの前に出ますから」 「あ。そっか」 茜さんが渡してくれたのは、一枚の円盤だった。その真ん中には二つ穴が空いていて、反対側が見えるようになっている。両端にも同じように小さな穴があるけど、そっちは紐を通すのに使うんだ。 茜さんに手伝ってもらって、即席の仮面を着けて。一体何のためにおめかししたんだろうと疑問に思いながら、「ボク」はお久しぶりに外に出た。 神皇である「ボク」は、人前に出る時はいつも仮面を着けることになっている。シンセイをまもるためとかそういう理由らしいけど、「ボク」にはよくわからない。わからないけど、顔を見られるのはすごくいけないことだと茜さんも言ってたから、きっとまもらなくちゃいけないことなんだと思う。 「陛下!」「神皇陛下万歳!」「陛下たん萌えぇぇえッッ!!!」 皇居の外には大勢の人がいた。「ボク」の知らない人ばかりだったけど、みんな笑顔で手を振ってくれた。「ボク」も笑ってあげたかったけど、仮面で顔が見えないからあきらめた。せめてもの気持ちを込めて握手するとみんな喜んでくれた。中には鼻血を出して倒れる人もいたけど、だいじょうぶかなぁ? 今日のコウムはお年寄りの住んでるお家を一軒一軒訪問すること。おじいちゃんおばあちゃんも一人はやっぱりさびしいんだね。「ボク」が行ったら、それだけで泣いちゃった人もいた。「ボク」もなんだか悲しくなって泣きそうになったけど我慢したよ。神皇は人前で涙を流しちゃいけないんだ。シンセイがソコナワレルんだって。 そういえば、お父さんとお母さんが「おかくれになった」時も、「ボク」は泣かなかった。その時はずっと一緒にいられるって知らなくて、悲しくて寂しくてしかたなかったはずなのに。それでも「ボク」は泣かなくて、かわりに茜さんが泣いていた。どうして泣くのと「ボク」が聞くと、茜さんは「あなたが泣けないのが悲しい」と答えた。その頃の「ボク」は神皇じゃなくて、茜さんは「ボク」のお世話係でもなかったけど。「ボク」にとっての茜さんは、その時から何も変わっていない。 あっという間の一日だった。 コウムが終わって皇居に戻る頃には、お日様がカラスさんと一緒にお家に帰っていくのが見えた。あんまり遅くなると茜さん心配しちゃうかな? でも、 「ちょっとだけ、いいですか?」 「フ。我々も一服するとしましょう」 近衛のおじさんに許可をもらって、「ボク」はお庭に下りた。お庭にはいろんな種類のお花が咲いていたけど、その中の一つを摘んでみる。茜さんの好きな、小さな白いお花。「陛下に似て可愛い」と言ってくれたのを思い出して、「ボク」はぎゅっとお花を抱き締めた。ああいけない、そんなことしたらお花が潰れちゃう。お花は可愛いから乱暴に扱っちゃいけないんだ。大切にしないと、すぐに散ってしまう。 ──お父さんとお母さんがそうだったように。きっと、茜さんも……。 「陛下ぁー。おかえりなさーい」 宮の入り口に立って、茜さんが手を振っているのが見えた。今では「ボク」の一番大切な人。「ボク」の帰りを待って、「ボク」を出迎えてくれる、「ボク」のお姉ちゃん。 「そろそろ行きましょうか、陛下。茜お嬢さんが待ちくたびれておいでなさる」 「うんっ」 そうだ、ただいまを言わなくちゃ。近衛のおじさんの言葉にうなずき、「ボク」は走り出した。仮面を取り、素顔になって。大切なお花を持って、大切な人のところへ。 多分、その時「ボク」は思い出していたんだと思う。初めて茜さんと出逢った時のことを。だから、全然気づかなかった。 可愛いお花は、とても簡単に散ってしまうってことに。 「あっ……」 手のひらからこぼれ落ちた花びらが風に飛ばされ、「ボク」は立ち止まった。それから、いつもならぴったりとついて来てくれるはずの近衛の人達が、誰も居ないことに気づいて。 「きゃああああああああああ」 誰かの悲鳴が聞こえた。「ボク」のよく知る、女の人の声だった。 いつの間にか、茜さんの後ろに誰かが立っていた。だけど茜さんは気づかず、「ボク」の方を見て悲鳴を上げている。いや。きっと茜さんが見ているのは「ボク」の後ろだ──。 「はじめまして、神皇陛下」 「──っ──!?」 耳元で囁かれた。低い男の人の声。近衛のおじさんかと思ったけど、少し違っていた。何ていうか、その。とても低くて、暗くて、まるであの時のお父さんの声のようで。 どうしよう。逃げ出したいのに、足が動かない。 「陛下! 逃げてくださ──んぅっ!?」 「おおっと。動くんじゃねーよお嬢ちゃん。捻り殺されたくなかったらなァッ!」 茜さんの後ろにいたのは、とても大きな男の人だった。宮の柱みたいに太い腕で茜さんを捕まえ、口を封じている。赤い髪を逆立てて、その男の人はとても楽しそうに笑っていた。何故か、その顔はトマトジュースで汚れていた。トマトジュースのように赤い、どろどろの液体で。 「腐腐腐腐腐。さあ、我々と共に楽園へと参りましょう。陛下」 動けない「ボク」の体の上を、男の人の手がゆっくりと這っていた。首筋から肩、肩から胸。胸からお腹を伝って、足先にまで。何だかとても気持ち悪かったけど、「ボク」は抵抗できなかった。茜さんを助けに行きたいのに、手が震えて止まらない。 「姦姦姦姦姦! こいつぁ上玉だぜ! 殺さずいただいちまうか? なあホウヨウよ」 「い……嫌ぁっ……!」 泣き叫ぶ茜さんの体に、汚い手が触れているのに。「ボク」には、どうすることもできずにいた。どうして……どうして、こんなことに……。 「おいおい、暴れるなよ。思わずくびり殺したくなっちまうだろうがよ? そいつらみたいになりたくなかったら、大人しくしてるんだな」 「ひっ」 茜さんを押さえたまま、男は「ボク」を指差した。違う。「ボク」の後ろに居るはずの、近衛の人達をだ。こわくてとても振り向けないけど、きっとそこにはおじさん達の××が。 「腐腐腐。見たいですか? 彼らが、どうなったのか」 「や──」 ぐるんと、景色が回った。庭のお花が散っているのが見える。それから、一面のトマトジュース。想像していたような、おじさん達の死体は無かった。 そのかわりに、何だかよくわからないモノがばらばらに転がっていて。それがおじさん達の体の一部だと気づくまで、「ボク」はじっと見つめていた。 「………」 目をそらすことはできなかった。目を閉じようともせず、「ボク」はモノになった人間の体を観察していた。 これが。これが、人間の、成れの果てなんだ……。 「腐腐腐腐腐。カンダタンよ。やはり陛下には素質がおありのようだ」 「ほう? てことは、楽に終わりそうだな。じゃあこの娘は俺様が」 「焦るな。その娘は使える。腐腐腐腐、お楽しみはこれからさ」 男の人達が何か喋っている。その間にも茜さんが暴れて、痛めつけられているのが見える。だけど「ボク」には、男の声も女の悲鳴もよくは聞こえず。それら雑音をかき消す程に大きな、規則正しい音色に耳を傾けていた。 「ざくざく、ざくざく」 「挫苦挫苦、挫苦挫苦」 ああ、これはスコップで穴を掘る時の音だ。「ボク」がお父さんとお母さんを埋めた時の音だ。だからか、こんなにも懐かしく感じるのは。 「麗しの神皇陛下。さあ、お父上とお母上の所に参りましょう。愉しむなら皆で一緒にね。その方が陛下も良いでしょう? ふ、フフフ、腐腐腐腐腐」 「い……嫌……イヤアアアアアアッ……!」 男達に連れられて、「ボク」と茜さんは歩いていく。「ボク」達のお部屋へ。 シンセイなる、ギシキのソノへと。 風雲激闘編 第弐拾弐話「喪失の地平」 あ、ありのまま今起こったことを話すわ! 『前回カウパー小次郎ことキモ麻呂の奴がわたし達の前に現れたと思ったら、 今回いきなり喫茶店が火事になってた』 な……何を言ってるかわからないと思うけど、わたしも何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……。 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてないわ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……。 ぼうぼうと勢い良く燃え盛る炎を前に、わたしはどうすることもできずにただ立ち尽くすのみだった。 本気で訳が分からない。 喫茶店「Choko De Chip」は、わたしにとって単なる溜まり場以上の意味を持っていた。今日も新キャラ春夏の紹介がてら、マスターやリョーコさん、そして下僕一号のマリアたんと戯れていた。わたしにとってこの喫茶店は、平穏な日常の象徴と言えた。 それが、何故? 一体何が起こったというのだろう。 「酷い有様やな」 ぽつりと呟いたのは春夏だった。わたしの傍らに立ち、淡々とした口調で彼女は告げて来る。わたしの知らない出来事を。 「自分らにあだなす者だけやない。その関係者までをも、見せしめに皆殺し。奴らのやりそうなことや」 春夏は何を言っているのだろう。わたしは知らない。彼女が何を言わんとしているのか、全くもって理解できない。殺すだの何だの、そんな物騒な単語はわたしの日常には存在していない。否、存在が許されるはずが無い。 「ごめんな、ミサキ。ウチの力じゃ、あんたしか助けられへんかった」 なのに、春夏はまだそんなことを言う。何よ、その言い方からすると、まるで誰かが×んだみたいじゃないの。馬鹿ね、そんなことある訳ないのに。 わたしの目の黒い内は、誰一人として×させたりしない。つーか元からして下ネタ満載のコメディなんだから、××とか出しちゃ駄目でしょ。途中で路線変更したお話って良くあるけど、大抵はロクな終わり方しないんだから……まあ、中には成功したのもあるだろうけど……。 わたしが言いたいのは、こんな終わり方は認めないってこと。そうだ、こんなのが現実であるはずがない。これは夢だ。寝て起きたら喫茶店は元通りになってて、ドアを開けたらリョーコさん達が笑顔で「いらっしゃいませー」と出迎えてくれるはずなのだ。 そうだ、きっと、だから、そう。わたしは、何も失ってなど居ないんだ。 「……ミサキ。現実を受け入れられない気持ちはよう分かるよ? けどな、現実はいつだって残酷なものなんや。ショックで思い出せないんやったらはっきり言うたる。あんなぁ──」 「やめてよ、もう!」 気が付くと、わたしは春夏の頬を叩いていた。 「……あ……」 叩いた方の手の痛みが、わたしの意識をクリアにさせた。薄れていた記憶が、徐々に蘇り始める。 「ウチとあんた以外、全員死んだ。奴らが、皆を殺した。ちゃうか、ミサキ?」 「………」 春夏の一言が決定的だった。頬を叩かれた痛みなど感じさせない、無機質な言葉。それでわたしは、全てを思い出していた。 できれば、忘れていたかった。一番身近に感じていた人達が、一人ずつ、惨たらしく殺されていく生々しい光景なんて。けれどわたしは、思い出してしまったのだ。 始まりは春夏の挑発だった。 「いい気になってんやないで、キモ麻呂ぉ」 わたし達に向かって一方的に勝利宣言してきたカウパー小次郎ことキモ麻呂に指を突きつけ、彼女は敢然と言い放ったのだ。 「アンタがどんなに過去を捨て去ろうとしてもなー。アンタが生きて来た軌跡は、ウチらの脳内にちゃーんと刻まれとるんやで。つまりは、ウチらが生きている限り、アンタは永遠にカウパー小次郎にはなれへん。アンタはずーっと、ただ強者に依存して生きることしかできない臆病者のままなんや。 はっきり言うで? アンタはミサキには遠く及ばへん。どんなに傑作を生み出そうとも、決してミサキを打倒することはでけへんのや!」 今にして思えば、春夏の発言は図星を突いていたのだろう。たちまちキモ麻呂は激昂し、春夏を殴り倒した。そしてその後、止めに入ったマスターを……。 銃刀法違反だとか、そんなことでキモ麻呂を咎めるつもりは無い。ただ、彼はわたしにとって到底許せるはずの無い罪を犯した。ただ、それだけのことだ。 それからキモ麻呂は、マスターを喪い泣き叫ぶリョーコさんをも、その手にかけた。理由は「うるさかったから」。至極単純な理由で、リョーコさんは射殺された。 そうなると店内は騒然となった。我先に逃げ出そうとする人、警察に通報しようとする人。人々は色々な行動を取ろうとしたが、結末は皆一様だった。すなわち、死。 全てをキモ麻呂が犯した訳ではない。彼が合図を送ると、店内に迷彩服を着た男達が、機関銃を手に侵入してきた。それで、もう終わり。完全に退路を絶たれたわたし達に、生き残る術などは無かった。 銃弾の嵐の中、わたしを庇ってマリアが撃たれた。下僕は下僕なりに主人を護ろうとしたのだろうか。馬鹿なマリア。わたしは半欠けだから、銃で撃たれたくらいじゃ死ねないのに。 「逃げて……美沙樹お姉様」 それが彼女の最期の言葉だった。至近距離で蜂の巣にされたマリアは、可哀想に顔面を粉々に砕かれ果てていった。 わたしの記憶はそこまでだ。恐らくその後、わたしも皆と同じように殺されたのだろう。だから覚えていなくて、それなのにわたしだけ生き残ってしまった。何という理不尽、何という不条理だろう。 皆、当たり前に生きたかったはずなのに。 「奴らはウチらから大切なモノを奪う。せやのに、奴らが裁かれることは無い。 エロゲを制する者は世界を制する──そんなアホみたいなルールがまかり通っているからや」 店を包み込んでいた炎が、徐々に弱まっていく。それはつまり、燃やすモノが少なくなっていることを意味する。全て燃え尽きてしまった、わたしの大切なモノ達は。 「いつからやろな、この世の中が狂い始めたのは」 「……はるなつー、あんた」 もしかしたら。春夏もまた、誰かを失ったのだろうか。 そこまで思考が及んだところで、わたしは思い出していた。ナイトウィンドの元シナリオライターについて話した時の、酷く虚ろな春夏の眼を。 そうだ。わたしだけじゃない、彼女も失くしていたんだ。誰よりも大切な人との、何よりも大切な未来を。 どうしてだろう? 今まで遠くに感じていた春夏との距離が、ここに至って近くに感じる。今なら、彼女の想いを理解できる気がした。 「これが終わりやない。歴史は繰り返されるんや。奴らが存在する限り……奴らの天下が続く限り、必ずどこかでまた同じことが起きる。悲しい思いをする人間がどんどんどんどん増えていく──そんなの、黙って見ていられるかいな」 春夏は、破壊するつもりなんだ。狂ってしまったこの世界を、彼女から日常を奪い去った奴ら全てを。つまりは、これは復讐だ。それならわたしにも理解できる。単純極まりない、良くも悪くも人間らしい思考だったから。 「改めて言うで、ミサキ。 全ては奴らを倒すため。ウチらに協力して欲しい」 そして、わたしもまた。春夏の復讐計画の片棒を担がされ、泥沼の争いに巻き込まれていくのだろう。それもまた仕方の無いこと。 だからわたしはここに、「風雲激闘編」の開幕を告げることにした。 ──でも、既に手遅れだったのかも知れない。 わたしの知らないところで、歴史は大きく動き出していた。 「神権復興(ヤンマーニ・ヤンマーニ)」 その言葉を旗印に、神皇が現政府に対して謀反を起こした。 彼は齢十歳ながら、自ら「現人神(あらひとがみ)」を名乗り、京都への遷都を開始。 数日後には、神国・日本の復活を宣言した。 こうして、わたし達の戦いは始まった。 今日の日記: 俺たちの戦いはこれからだ! 応援ありがとうございましたー! ……って言いたくなるようなラスト。悩ましい……ああ、悩ましい。 でもまあ、どうせ次回には皆何事も無かったかのように生き返ってたりするんだろうねぇ。所詮人の生命なんて神(作者)の前では大河に浮かぶ木の葉のようなものなのさ……(遠い目) それでは、明日に続くのだっ(はぁと) |