「お嬢様は侵略者×魔法少女(仮)はるか」勝手にミックスお正月短編 (2) |
| 『魔女の館』などというわりには、わたしたちが案内された建物は普通の洋館でした。
ただ外観に蔦がびっしり隙間なくまとわりついていて、まるで建物が触手にからみつかれて激しく凌辱されてるいよう(ry 『……何を考えてるのよ貴女は』 おっと考えが漏れてしまいましたか。 テレパシーで私の考えていることを読んだお嬢様はやっぱり体を赤く染めています。 この程度で赤くなるなんてお嬢様はやはりまだまだお子ちゃまですねー。 『…………悪かったわね』 そんなことを言ってるうちに、ロング子さん(仮名)が中に案内してくれます。 あ、ここに来るまでにお互いに自己紹介は済ませましたので、以後、ツインテ子さん(仮名)をはるかさん、ロング子さん(仮名)をほしみさん、とお呼びすることにします。 二人に案内されて入ったリビングには、品のいい一セットのソファーが横長の背の低いテーブルを囲んでいて、そのソファーの一つに、これまたものすごい美少女が腰を下ろしていました。 「“先生”、お連れいたしました」 ほしみさんがその美少女に向って呼びかけます。ほしみさんが東洋系の美少女だとしたら、ソファーの彼女は西洋系の美少女というべきでしょうか。どこまでも見通すような色素の薄い瞳と日に当たったことのないような白い肌が人形のようでいて、それでいて浮かんでいる表情はどこかふてぶてしさすら感じられるようで、そのアンバランスさに目が引き付けられてしまいます。 「って……“先生”!?」 先生ということは、ほしみさんやはるかさんの魔法の先生だったりするのでしょうか。 この若さでものすごい魔法の使い手なのか、あるいは逆にものすごいおばあさんなのに、魔法でこの姿を保っていたりするのでしょうか。魔法の世界の常識はわたしにはよくわかりません。 「ようこそ。おかしな客人」 お嬢様みたいにこちらの考えを読んだわけではないでしょうが、その“先生”はわたしたちのこちを見て、にやり、としか言いようのない笑顔をその顔に浮かべて―― 「まずは座ってゆっくりしてくれ。おっと、そっちの彼女――でいいのかな?――は、ここに」 ここに、と言われたソファーには、何やらシートのようなものが敷いてありました。どうやらお嬢様対策のようです。 この扱いにお嬢様がどうするかと思っていると、意外と素直に腰を(?)下ろしました。しかしやっぱりお嬢様には前人類用のイスは座りにくいようです。 あと、それを見てはるかさんとほしみさんもソファーのあいた所に腰をおろします。ていうかはるかさんが露骨にわたしから距離を取っているのは何故でしょうか。 「すまんな。その、どうもてなすのがいいかよくわからないもので」 『いえ、どうぞお構いなく』 おおー、お嬢様がすごいよそ行きの顔してよそ行きの発言してます。これは珍しいものを見たかも。 「まったく、正月早々変わった客が来たものだ。お二方はいったいどちらから?」 「あ、それは――」 かくかくしかじかまるまるさんかくさんかく。 と、わたしがここに至るまでの出来事を語ったところ、“先生”は何やら頭を抱えています。 「くそ。こちとら並行世界の探索にすら成功してないってのに、おとしだま一つで世界を越えてきやがったのか。なんつーデタラメな……」 いやまあ、そこのところはものすごく同意しますけどね。 ですが、わたしの名誉のためにも、デタラメなのはお嬢様だけだということは理解しておいてほしいところであります。 「さて、どうする? せっかく来たんだから、こっちの世界を見物していくか?」 「“先生”っ! こんなセクハラ魔人を野放しにしたら何が起こるかわかったもんじゃないですよっ!」 はるかさんがソファから立ち上がって力説しています。 うーむ。セクハラ魔人呼ばわりとはずいぶん激しい拒否反応……これは、きっと初めてでしたね、ああいうことされるの。 そのことを想像すると思わず、うへへ、と笑みがこぼれ、それを見たはるかさんが毛を逆立てて距離をとりました。 やはり、前人類のおにゃのこはいいものですねー。いっそこのままこの世界に居続けるというのも―― 『お言葉は感謝しますが、帰る方法があるのならできるだけ早く帰りたいのですが』 ……お嬢様? なんでしょう、そう言ったお嬢様の様子が……なんだか元気がないように見えますが。 「ん、わかった。そういうことなら、準備をしよう。そうだな……そちらの二人だけ、来てくれるかな」 そんなわけで、わたしとお嬢様は“先生”に連れられてリビングを出ました。 ◇◆◇◆◇ あとのことは正確に理解できているわけではないので簡単に語らせていただきます。 わたしたちが連れていかれたのは、その建物の地下深く――岩肌の露出している洞窟のような場所で、そこには一人の男の人が待っていました。 前人類の男性を見るのもこれまた珍しいことだったのですが……白いスーツに身を包み、胸元のポケットに孔雀の羽根を刺したその方は、妙な……というか、どうもわたしたち前人類やお嬢様のようなクトゥール人ともちょっと違った雰囲気をお持ちでした。 「すまんな、ちょっと手を借りるぞ」 「それはよろしいのですが……これまた珍しいお客人で」 「並行世界のしかも宇宙人だそうだ。ともあれ、こちらの『お嬢様』は世界の間に穴をあけることができるそうだ」 「いやいや、こんなところでそんなことをすれば、貴女も私も吹っ飛びますよ?」 「だからだ、そのエネルギーを制御して、“穴”に指向性を持たせてほしい。要するにこの二人の世界に繋げてほしいわけだが」 「…………また貴女はそんな無理難題を」 そんな会話が、“先生”と男性の間にかわされた後、お嬢様が、渡された大きな鋼鉄の玉を地面に叩きつけ―― 気がつけばわたしとお嬢様は、元のお屋敷に戻っていたのでした。 ◇◆◇◆◇ 「戻って……来れたのですか?」 『どうやらそのようね』 見慣れたお屋敷の一室……いえ、扉とか壁とか半分くらい吹き飛んでいて、むしろ新鮮で斬新な姿を見せてくれてはいますが、ともかくわたしたちの暮らしているお屋敷に違いありません。 そのことに安堵すると同時に、おそらくはもう会えないであろう、おにゃのこたちのことが何故か頭をよぎりました。 はるかたん……ほしみたん……“先生”……せめてもう一度くらいもふもふしたかった。前から後ろから抱きついてあれやこれやいろいろしてみたかった……。 『……向こうに、残りたかった?』 「ちょっと心惹かれますねー。やっぱりおにゃのこの触り心地といったらそりゃもうこの世のぱらだいすで――」 あれ? お嬢様の反応がちょっと変です。 てっきり『何馬鹿なことを言ってるのよっ! 貴女は私のものなんだから、主を放っておいて他の女にうつつを抜かすなんて許さないんだから!』とかわーわー言い出すかと思ったのですが、気味が悪いほど静かです。 『向こうの世界にいた間……すごく心細かった。同胞が一人もいない場所で、まるで見世物を見るような視線を浴びせられて、違う種族の人に囲まれて、すごく不安だった』 ああ、お嬢様が途中から妙におとなしくなっていたのはそのためでしたか。 さすがのお嬢様も、たくさんの前人類の中に一人ぼっちでは心細くなったりするんですねー。 『――貴女は、ここで、いつもあんな思いをしているのね』 ……………………。 お嬢様は、その姿からは想像がしにくいですが、非常に聡明なお方です。 たったあれだけの体験から、そんなことに気づいてしまうほどに。 『……後悔、している? 私の冥土になったことを。いっそ、死んでいた方がよかったって……思ったり、する?』 「後悔なんてしてるわけないじゃないですか」 『…………え?』 「向こうでも言ったと思いますけど? わたしは、お嬢様に冥土として取り立ててもらったことを感謝していますよ。そりゃ、ときに寂しくなることだってありますが、生きていればいろいろ面白いこともありますし」 『……………………』 「それに――」 こちらを見上げてくるお嬢様の姿を見ていると、こうしてお嬢様の側にいるのも悪くはないと、そう思えてくるのです。 『それに……何よ?』 「いやあ、お子ちゃまなお嬢様を一人にするなんて危なっかしくてできないじゃないですか。やっぱりお嬢様にはわたしがついていないと」 『なっ! なによ! 私は一人で何でもできるわよ。貴女なんかいなくたって全然平気だし!』 「はいはい、そういうことにしておいてあげますよ」 『何よその反応はっ! ホントに何でも一人でできるんだから!』 きっと今年もたくさんの騒動に巻き込まれることになるのでしょうね。 やれやれとため息をつきたくもなりますが、お嬢様の側にいられるのであればそれもまた楽しい出来事になるのかもしれませんね。 ……なにらしくもないこと考えてるんでしょうね。 へっ、と軽く笑って首を振ります。 『そういえば、さっきの騒ぎでうやむやになっていたけど、今度こそ貴女にちゃんとおとしだまをあげないとね』 その声にお嬢様のほうを見ると、お嬢様は一抱えもある鋼鉄の玉を触手でからめ取って持ち上げ―― 『はい、おーとーしーだー』 「……そんな天丼オチいりません」 『なによなによーっ! ノリが悪いわよー。もっとこう、大慌てで止めに入るとか様式美にのっとった行動が――』 ……早くも前言撤回したくなります。もしかして今年も一年こんな感じなのでしょうか。 ま、いいんですが。 それでは、前人類の皆様、こんなわたしたちですが、今年も一年よろしくお願いいたします。 ではでは。 「お嬢様は侵略者×魔法少女(仮)はるか」勝手にミックスお正月短編 お年玉騒動記 了 という訳でかぼス様からいただきましたー。ありがとうございました☆ |