
『……何これ』
何って、お嬢様とわたしですよ。
どうです、可愛く描けてるでしょう?
『アンタにイラストなんて描ける訳無いじゃない。
大方その辺で拾った怪しいソフトでも使ったんでしょ。
──それより私が聞きたいのは、何でクトゥール人の私がアンタ達と同じ姿をしてるのかってコトよ』
細かいことは気にしないで下さい。
ちょっとした願望、みたいなものですから。
『ふぅん。ま、良いけどね』
……あれれ?
てっきり怒られるかと思ったのですが、お嬢様はあっさり引き下がってしまわれました。
◇◆◇◆◇
それから数日後。
いつものようにお庭を掃除していたわたしは、イラストのことなどすっかり忘れておりました。
何しろ命がけの掃除です。
至る所に得体の知れない植物が生えていて、そのどれもが致死性の毒ないし人食性を持っています。
そんなこと言ってる間にもほら、アサガオに擬態したアガサ王がわたし目掛けて槍を突き出し──。
次の瞬間、爆砕していました。
『何遊んでるのよ。
この程度の仕事、さっさと済ませなさい』
その声はお嬢様!
いやー、助かりました。危うく王様に食べられるところでした。主に性的な意味で。
などと言いながら、わたしが笑顔で振り向きますと。
そこにはお嬢様が立っていました。当たり前です。
でも、そこに居たお嬢様は普段わたしが良く知る蛸の姿ではなく。
いつかどこかで見たような、美少女の姿となっていました。
わたしと同じ、旧地球人類の──。
「お、お嬢様? そのお姿は」
『ふふ、驚いているようね。期待通りのリアクションだわ。
どう、あの絵にそっくりでしょ? 私の力をもってすれば、形態模写なんて簡単なものよ。特にアンタ達って単純なカタチしてるから楽だったわー』
け、形態模写。
それってアレですか、擬態みたいなモノですか。確かに烏賊や蛸なんかは得意そうですけど、そういうの。
けど、ここまで完璧に再現されるとは……ううむ、恐るべしクトゥール人の身体能力。
『アンタがあの絵のコのこと気に入ってたみたいだったから、真似してみたのよ。どう、可愛いでしょー』
「ええ。まあ、すっごく」
『うふふ。そうでしょうそうでしょうとも』
そう言って微笑むお嬢様。
細部まで地球人的になってて、本当に可愛らしいです。
ああ、夢のようですわたし。
これで夢オチだったとしたら相当凹みますが、きっとそんなコトは無いと信じます!
『ねえ。私のこと、好き?』
「え? 何をいきなり」
『だって、イラストには描いてるじゃない。私のこと愛してるって。
あれって本当なの?』
「あ……当たり前じゃないですか!
こんな可愛い子を好きにならない筈がありません! ええもう。そろそろ暴走しても良いですかわたし!?」
『ちょ……何……きゃっ……!?』
がばぁ。
湧き上がる衝動のまま、わたしはお嬢様を押し倒していました。
ああ、何と言う華奢な身体。普段はぶよぶよしてるゴムみたいな感触が、今はマシュマロのように柔らかくなっております。これはもはや形態模写とかいうレベルではありませんね。変身です。素敵です。
「愛していますお嬢様っ……さあ、わたしに全てを委ねて下さいっ……!」
『ちょっと、ダメだってば……あああああっ』
さて、まずはスカートから脱がして──と。
あ……あれ?
「お、お嬢様」
『な、何? もう、やるなら早くして』
「いや、それが。
スカートの中から、触手が覗いているんですが……」
『ぇ』
フリルの付いたスカートの中には、おびただしい数の触手がうねうねと蠢いていました。ちょっとしたトラウマ映像です。
期待していただけに、余計に……。
『だ、だって。
あの絵だけじゃ、中身なんて分からないしっ』
「お嬢様……」
『何よ? 良いでしょ別に中身なんて! 外見さえ良ければ構わないんでしょ、アンタ達下等生物はっ』
その通りです。
ですが、このままでは色々と致すことができません。
実用性の無いエロに意味は無いのですよ、お嬢様。
『何を悟ったようなことを……!
ふんだ、いいもん。
もう二度と形態模写なんかしてやらないんだからっ』
あああ、何と言うことでしょう。
一瞬お嬢様の身体が光ったかと思うと、その次の瞬間にはいつものお嬢様に戻っていました。
どうやらつい言い過ぎてしまったようです。
わたしとしたことが、とんだミスを……。
『じゃあね。せいぜいお仕事頑張りなさい。
この美しい私のためにね。おーっほっほっほっほ』
く。今回は完全にわたしの敗北です。
しかし、今に見ていて下さい。
必ずやわたしは、お嬢様を再び人間にしてみせましょう!
その時こそは中身についても……アレやコレや手取り足取り教えて……。
『あ。危ない』
グサ。
もう一匹居たのでしょうか。
アガサ王の投げた槍が、的確にわたしの心の臓を貫いていました。
あっちょんぶりけ。
■ さらにおまけ:エリザベス

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