お嬢様は侵略者 その11『リボンとループ』 |
| 前人類の皆様、おこんばんはー。 寒い日が続いていますが、風邪などお引きにならないよう、ご自愛下さいませ。 かく言うわたしは、病気とは無縁の日々を送っております。多分クトゥール人の遺伝子を細胞レベルで取り込んでいるからですねド畜生。 ──あ、でも。 確か前に一度、お嬢様が熱を出されたことがあったような。 『それは多分、ハスタフルエンザだろう』 あー、確かそんな名前でした。ヤブ医者が言ってました。 にしても言いにくい病名ですねー。舌を噛みそうです。 ──って、エリザベス様。 また勝手に人の心を読んで……。 『いや、すまんすまん。廊下の真ん中でぼけっと突っ立ってるもんだから、また過去の誰かと交信でもしてるのかと思ってな。 受信相手がジェームズかも知れないから、一応挨拶しとこうかと』 うーん。残念ながらジェームズ氏かどうかまでは、わたしにも分からないのですが。 てゆか、そんなにジェームズさんにメッセージを送りたいのなら、ご自分でやれば良いじゃないですか。持ってるんでしょ、テレパシー能力。 『いや、それは……何か、照れ臭くてな』 …………。 わたし、今までエリザベス様のこと、クーデレだと思っていたのですが。 実はデレデレだったのですね。見せ付けてくれちゃってーもー。 『? どういう意味だ?』 ……いえ、気にしないで下さい。 そんなことより、ジェームズさんへのメッセージです。 何か言いたいことがありましたら、今の内に言っておいて下さい。わたしから伝えておきますので。 『そうだな。ありきたりだが、元気でやれよ、わたしは元気でやってるぞ。というのと、後は──。 やっぱりメイドよりわたしの方が可愛かったぞ、と』 ……は? 何ですかそれ? 『いや、気にしないでくれ。とにかく、現状をありのままに伝えてくれればそれで良いからさ』 はぁ。何か釈然とはしませんが了解しました。 それでは改めまして、テイク2いきたいと思います。 ◇◆◇◆◇ えー。前人類のみんなぁ、こんばんび! 最近ちょー寒(さび)いけど、みんな元気にやってっかー? オラは今日も元気だどー。 『……ちょっと。 何よその変テコな言葉遣いは』 これはこれはお嬢様。 いや、たまには挨拶の仕方変えてみようかと思いましてね。ほら、毎回同じだとマンネリ化するでしょ? 『だからってメイドとしてどうなのよそれは。 まあいいわ。こんなところで油売ってないで、出かけるから準備して頂戴』 へいへーい。相変わらず冥土使いの荒い人だ。 『む。何よその言い方』 そうですよねー。お嬢様まだまだお子様ですもんねぇー? 一人でお着替えなんてできる訳ないですよねぇーふふふん。 『あー、またそうやってバカにしてー! できるわよ着替えくらい! アンタに仕事あげなきゃ悪いと思ってわざわざ手伝わせてただけなんだから!』 じゃあやってみて下さいよ。わたしのことはお気になさらず。 終わるまで、ここで見てますから。 『ふん! 私の華麗なる着衣テクを拝ませてあげるわ!』 まあ、着替えっつっても基本的にお嬢様方は全裸に近いので、頭のリボンを取り替えるくらいなんですけどね。 幾らお嬢様でもそれくらいはできるでしょう。 そんな風に思っていた時期が、わたしにもありました。 ◇◆◇◆◇ 前人類の皆様、おはこんばんちわ。 さすがにテイク3ともなると言うことが無くなりますね。 我ながら語彙が貧弱だなーわたし。口先の魔術師への道程はまだまだ遠く険しそうです。 『何だこの惨状は? ハスタフルエンザでも再発したか?』 ああ、これはこれはエリザベス様。 先程の件ですが、つい今しがた発信しておきましたよ。ジェームズさんに届いていると良いですねー。 『発信って。この現状を、ありのままに……か?』 うぃっす。勿論です。 ご自分のリボンで自らの肉体を緊縛されたお嬢様! 羞恥と怒りで真赤に染まったその様子はさながらボンレスハムのよう! こんな面白いネタ、脚色する必要なんてありませんが何か? 『いや、そうじゃなくて。さすがに可哀想だろ? 助けてやったら』 嫌ですよ面倒臭い。 大体、こうなることを望んだのはお嬢様の方なんですから。 冥土として、ご主人様の願いを妨げるようなことは絶対にできません。ええ、できませんとも。 『いや、しかし……さっきから物凄い形相で睨んでるんだが』 み、見ないで下さい。視線を合わせてはいけません。呪われます。主にわたしが。 ◇◆◇◆◇ 前人類の皆様、こん──。 『いつまで続ける気?』 ……コマネチ。 いやー、たはは。 ほら、無限ループって怖くないですか? 『怖くは無いけど飽きたわ。別にループしてる訳でもないし。茶番はもう終わりよ。 いいから、さっさとリボンを結び直しなさい』 はいはい、分かりましたよもう。 結局わたしがやることになるんですから。余計な手間増やさないで下さいよ……っと。 うわ、絡まった。 『ちょ、ちょっと! 何やってんのよ!? しっかりしなさいよね。ウチにはアンタしか居ないんだから』 はーい、すみません。 ──でも、ようやくお嬢様もわたしのありがたみに気付いたようですね? そうですよ、このお屋敷に冥土はわたし一人しか居ないんですから。お嬢様のお世話をできるのはわたしだけなんですからね? もっともっと、感謝していただきたいものです! 『調子に乗るんじゃないわよ。 ……全くもう。言われなくても感謝してるわよ』 わたしもですよ、お嬢様。 『え!? え?』 何でもないです。 はい、できましたよ。 『あ……ありがと』 どういたしまして。 はて、どうされましたかお嬢様? 茹蛸みたいに赤くなっちゃって。熱でもおありですか? 例のハムスター病とか? 『それを言うならハスタフルエンザ。 病気とかじゃないから安心なさい。 ……まあ、ある意味病気みたいなものかも知れないけど』 はぁ。ま、何でも良いんですけどね。 くれぐれも風邪など引かれませんよう、ご自愛下さいませ。 『ん。気をつけるわ。 心配してくれてありがとね』 そりゃ心配もしますよ。 先程申し上げた通り、お嬢様のお世話をできるのはわたしだけなんですからね。看病とかそういう面倒な事態にならないよう、くれぐれもお願いしますね? 『…………』 ──って、あれ? どうされましたお嬢様? 今度は酷く青白いですね? あれ? あれれどうしたんですか? 折角結んであげたリボンを解いて──。 『ありがとう。貴女のおかげでリボンの結び方が分かったわ。 これは、そのお返しよ』 え、ちょっとお嬢様? 何でそんなモノをわたしに? あれ、あれれぇえ──? ◇◆◇◆◇ 前人類の皆様、何度もすみません。 オチが見つからなかったのでなかなか終われなかったのですが、ようやく落とすことができました。 まさかの、リボンプレイ落ち! 『プレゼントはわたしですっ(はぁと)』 とでも言えば良いのでしょうか。 ……皆様もどうかくれぐれも、寒さには気をつけてお過ごし下さいませ。 |